2020年12月8日(火)に、オンラインでワークショップが開かれました(本来はAコースのみ姫島現地「リアル」での開催予定でしたが、急遽「オンライン」に変更となりました)。世代や肩書きも異なる参加者たちが“自立型循環経済をどう実現するか”を共通目標に、ワークを通じてアイデアを出しました。
このメインのワークショップを行うまでに、東京プレイベントを2回、それと福岡プレイベントが行なわれています。オンラインではありますが、東京プレイベントでの①「私たちは世界を変えられる」から②「いろいろな人がいるから世界は面白い」までのコンセプト、リアル開催での福岡プレイベントでは「シビックテックと島テック」をテーマに、ニューノーマル時代の働き方や暮らし方を考える素地を作りました。
今回のワークショップでは、全てをオンラインで実施。ITアイランド構想の舞台となっている姫島村の会場予定地だったコワーキングスペースから配信を行い、“ナチュラル”についてワークショップ。また、“ソーシャル”と“テック”の2コースも、東京からのファシリテーターを中心に参加者が全国から集い、ワークショップを行いました。参加者は計3つのコースに分かれ、どのようなワークを行なったのでしょうか。
はじめに、姫島の村長を務める藤本昭夫氏からの挨拶がありました。姫島は質の良い車エビなどが獲れるグルメの島。ITアイランド構想から様々な企業にきていただき、ITをはじめ幅広い分野の方々の力を借りて姫島を盛り上げてもらいたいとのことです。
続いて、挨拶されたのは佐藤元彦氏です。ITだけでなく、県外で先端技術に携わる方を姫島に呼び込み、姫島をITの村として位置づけたい狙いがあります。県としては姫島が条件不利地域と言われても、ITアイランド構想によって、地方創生が可能な地として盛り上げていきたいのです。ワーケーションなどへの取組みも前向きに検討しており、「県と姫島が協力する体制を整えている」と話していました。
今回のワークショップを主催かつ運営したのは、大分県に拠点を構える公益財団のハイパーネットワーク社会研究所です。これまでに東京で2回と福岡で1回の計3回にわたってプレイベントを開きました。
この目的は、大分県と姫島村の連携を強化しつつ、村内にIT企業や人材を呼び込むほか、新しい雇用の創出や先端技術による地域課題の解決、県内の産業を活性化させるといった狙いがあります。
今回のワークショップでは、A〜Cまでの3つのコースに分かれ、ワークを進めていきます。それぞれのコースで出たアイデアを最後にまとめますが、10:00〜17:30までの長丁場。平日の開催でありながらも、多くの方が参加されました。姫島は人口減少が進んでおり、「現在の約2000人弱が、2040年には1000人ほどになるのでは?」と懸念されています。しかし、姫島には豊かな自然や離島ならではの文化が息づいており、人口減少の緩和と地方創生実現のためにIT企業の誘致を推進しているのです。
そのため、姫島村では、コワーキングスペースやIT環境の整備を行なっているほか、住民のリテラシー向上や人材育成、移住サポートなどにも取り組んでいます。
本日開催されたワークショップでは、参加者がA〜Cの3コースに分かれ、それぞれのテーマに沿ったアイデアを出していきます。コースごとの大まかな内容を以下にまとめました。
Aコースでは、午前から午後までの時間で3つのワークを実施しました。
午前中の最初のワークでは、すでに姫島に進出している企業の「ブレーンネット」や「Ruby開発」のほか、エコツーリズム協議会が登壇。そして、ハイパーネットワーク社会研究所の青木氏が、バーチャル・フィールドワークということで、大分県漁業共同組合を訪問、姫島地区の漁業運営委員長である北村氏にインタビューした。また姫島車えび養殖株式会社の松原社長にも同席してもらい、車エビ養殖場の現状と課題等を伺った。その内容を、ZOOMを通じて聞いていたワークショップAコースの参加者からは、姫島村の水産業について質問が多数、活発な意見交換の場となりました。
昼の休憩を挟んだ後は、ビジョン作りの時間です。午前中に話し合った内容をもとに、島の可能性や関係人口を増やす未来ビジョンについてディスカッションを重ねました。
その後、3つ目のワークはアクションプランです。島の環境を生かしたビジネスプランニングをし、最後の全コースが参加する時にプレゼンテーションを行いました。
Bコースは「情報とお金の流れ」を中心にワークを進めていきます。
前提として、課題は可能性であり、世界とどう戦うかを考えることに重きを置いています。技術的なものよりも、実践的なビジネスや具体的な地域の課題といった多面的な視点から、どんな部分にアプローチしていけば良いのかを話し合いました。
ワークの内容としては、現状のタブーと考えられている問題点を共有し、1年後や10年後の未来はどうなっているのか、課題を解決するためのアイデアをアウトプット。姫島を通じてニューノーマルをデザインするためのワークを行いました。
「人とモノの流れ」を中心に据えたCコースでは、過疎化や高齢化といった社会課題を掘り下げ、テクノロジーの活用法を模索していきます。自分と世界と仕事・地域をどう繋げるのかをベースにディスカッションを重ねました。AIやテクノロージーが、どのように楽しく面白い社会をデザインできるのかを参加者と共に考えました。
それぞれのコースに分かれつつ、昼休憩の時間を活用して<AI RCカーのデモンストレーション>が行われました。AIカーとは、市販のRC(ラジコン)カーをサイボーグのように作り、人間が教えた走行をAIが自立して走るもの。AIカーの流れはアメリカでも隆盛を見せているようです。
ロボットカーではなく例えば実際の現実社会、シリコンバレーではいろんな自動運転の開発が進められています。アリゾナのフェニックスでは、すでにグーグル子会社のウェイモでタクシーに実装しており、AIを搭載した車が自動運転で走行しています。事前に100万台の車から集めた走行データを学習させ、走行時は同時に1000の情報を予測しているようです。
A〜Cの各コースでワークショップを行った後は、全体へのプレゼンテーションの時間です。
それぞれの発表内容を以下にまとめました。
Aコースは、島の関係人口を増やすことを考えていました。そのためには島の魅力が必要ですが、姫島には十分な魅力があります。しかし、それを島外に発信できておらず、さらには島民も姫島の魅力に気付けていない点が課題です。
関係人口を増やすためには、バーチャルを使った情報発信のほか、AIカーを活用して特産品の車エビなどを輸送しても良いかもしれません。
「情報とお金の流れ」を中心にワークを進めました。社会問題を解決する上でテクノロジーは欠かせませんが、語り合うことで一人一人の内面が変わっていくことが重要という考えに至りました。
使う人のマインドセットが大切ですが、相手と価値観を共有するためには、何でも話し合える心理的に安全な場が必要です。この土壌を作るために地域や組織、個人の中でダイバーシティを受け入れるコミュニティの形成が、それぞれの成長や発展に通じるのかもしれません。
Cコースは、「人とモノの流れ」がメインテーマとなっています。
まず、ビジョンとして高齢者や障害者に優しい町作りや多様性を受け入れている社会を理想に掲げました。また、現状で社会問題と考えられているものでも、自動運転車などの先端技術を用いることで、「場所にとらわれずに誰もが安心して楽しく暮らせる社会」の実現が挙げられました。
全体のプレゼンテーションが終わり、参加者同士で感想を共有しました。
現在、姫島に進出しているRuby開発の方は、「B・Cコースに参加された方は、発展させられる可能性が姫島にはある」と感じたようです。しかし、問題点として決定権を持つトップが保守的である場合もあり、ITの活用で課題解決に取り組もうとしてもなかなか進まない現状があります。
そのために必要なのは、話していくこと。トップの人たちも納得するように対話を重ねることが重要なのでは?と話していました。このほかにも、現状の課題が大きすぎて、どう変えていけば良いか分かりにくい中で、「ITやテクノロジーの活用は欠かせない」という意見もありました。
コロナの蔓延によって、2020年は人々の生活や働き方に大きな変革が求められるようになりました。
しかし、今回のワークショップを通じて再認識したように、以前から姫島や日本の抱える課題は残ったままです。ニューノーマルをデザインするためには、ITの活用や人々のあり方が重要な鍵を握っています。ITアイランド構想を実現することで、姫島だけでなくこれからの日本がさらなる発展を遂げるかもしれません。
これまでの東京プレイベントや福岡プレイベント、そして本番の姫島ワークショップを経て、新たな時代を作り出していくのは、今を生きる私たちなのだと深く感じさせられます。
また、今回のイベントのダイジェスト版がYouTubeにありますので、是非ご覧ください。